はじめに ~有機経済学原論~
私は金融工学のクオンツチームとしてニューヨークのワールドトレードセンターに勤務していた時、トレーディングルームで動かす何億ドルもの世界中の資金の動きをコントロールする投資理論の開発に没頭していた。
人間は今、お金を生み出すことから離れなければ、人はその「生きる目標と意義」の喪失に気づけないことについて考えている。
企業人であった時、生産性向上という名の元にマニュアル通りに働くことを言わば強要せざる得ない雇用を必用とする無期的な人間関係と、パートナーと言われる人と人間的な魅力に先導されて自らの判断と有機的な人間関係をもって働くことができる雇用形態の2つの世界が存在していることに気づいた。
また、現代は無機物質を都市化の名のもとに無尽蔵に作り出す無機経済社会に対して、生物としても人間としても生きれる新たな社会モデル基盤「有機経済社会」について考えるようになった。
有機経済社会は、衣食住に必要な物「有機物」を生み出すことを目的とし、美しい森や河川、海を破壊することなく、豊かな国土と民族を形成し、人間同士の繋がりを重視する社会である。
有機経済社会は、有史以来自然発生的に営んできた生きるための最低限の人間生活をおくることを基本とするが、現代においては自給自足の生活を単独で行うのではなく、効率的な生産活動と受給バランスの統治をはかるしくみを有する、有機と無機が混在するハイブリッド新社会モデルを提唱したい。
有機経済社会モデルは、ある特区内での小さな実験モデルからでもいつでも始められる。そのヒントは米国で実証実験をした閉鎖型人口地球生態系にある。
写真:バイオスフィア2アリゾナ州に建設された、閉鎖型人工地球生態系。